『環境』政策方針

維新政党・新風本部政策委員会
平成十一年二月


 環境問題は人類共通の文明的重要課題であり、宇宙船地球号の危機が叫ばれて以来、人々の意識も大きく目覚めつつある。戦後におけるわが国経済の急速な発展は、自然の許容量を上回り、公害の先進国となつた。しかも、環境汚染、環境破壊を単なる公害と認識したことは、事態の深刻なる本質を見誤り、その対策を遅らしめる結果となつてゐる。わが国政府は、この問題に環境庁はじめ地方自治体としてもそれぞれ取り組んではゐるが、未だ表層的な働きかけに終始し、産業・経済・教育などを含めた総合的な立場から問題解決を図つていかうといふ姿勢には至つてゐない。

 現代科学の今後の進歩は、地球環境破壊の反省から、自然環境との共生を前提とした科学技術へと方向転換をしていく必要があり、既にその動きは少しずつではあるが進みつつある。同時に、文化・風土を内包する民族や国家が持つ固有の環境遺産をも尊重し、自然環境とともに環境問題の一環として捉へていく姿勢が大切である。

  環境問題は一国のみで解決できる問題ではなく世界的規模の対応が必要であり、人類の存続に関はるものである。わが国は国際社会において環境問題を積極的に提案し叡智を結集して、その解決のために行動を起こさなければならない。

一、資源再生制度の促進

  現在、廃棄物(エミッション)をなくし、資源循環型社会をめざす「ゼロエミッション」構想が提唱されてゐる。環境保全といふ地球規模の課題に答へる経済システムが求められてゐるのである。

  資源浪費・環境破壊型の経済システムを改め、環境負荷の少ない、資源循環型の経済社会システムの構築といふ大目標に向けて国民が結束して取り組むことが、今日の憂鬱な時代を抜け出すためにも有効な方法である。

 日本民族には、昔から自然と調和し共生してきた長い伝統があり、江戸時代といふ模範もある。公害克服や自然環境の修復、さらに資源リサイクル、植林などの分野では、世界の先端をいく多様な技術を持つてゐる。国を資源循環型社会へ切り換へていくために必要な資金もある。ただ一つ欠けてゐるのは、さうした方向に日本を変へていかうとする断固とした国民の意志(消費者と企業の双方)とその代表者たる為政者の決意である。

  特にゴミ処理は、どの自治体においても処理能力の限界性が大きな社会問題であり、財政上の圧迫要因ともなつてゐる。その解決策としては、生産者と流通業者の責任が一段と問はれなければならない。

  鹿児島県の屋久島は今、廃棄物ゼロ社会の実現に向けて大きく第一歩を踏み出してゐる。世界自然遺産に指定される少し前、屋久町・上屋久町の二つの町議会が、環境先進地域をめざす「屋久島憲章」を議決し(平成五年七月)、新時代の屋久島の進む方向をはつきり打ち出した。

  島の資源の徹底利用、島から化石燃料の追放、廃棄物ゼロ社会の三つの目標を掲げてをり、既にいくつかの大きな成果を上げてゐる。屋久島方式は、我々の大きな指針であると言へよう。

二、海洋河川汚染防止

 わが国は、山紫水明の国と言はれて水資源の豊富さを誇つてきた。海や河川はあらゆる不浄を浄化できるものと信じられてきたが、海洋河川の自浄能力・自浄作用が無限であつたのは遠い過去のことである。

  洗剤などの生活排水や工場排水による水質の汚染は、様々な魚類の生息に害を与へてゐる。生活排水や工場排水の規制が一層強化されなければならない。

  また、コンクリートで固められた河川は単なる用水路となり、自然の浄化作用を全く失はしめる結果を招いてゐる。そして、河川から海への出口には河口堰が建設され、アユやマスは海と川を自由に上下することができなくなり、その姿を消してしまつた。

  生きた河川を殺して、生物の棲めない用水の流れにしてしまふ護岸的発想から、洪水などへの安全を踏まへつつ自然を再生する河川へと転換が図られねばならない。

三、有害物質規制と代替品開発の推進

  二十一世紀に必要な常識の第一は、「有限で、劣化する地球」をすべての出発点にしなければならないことである。二十世紀の常識は「無限で、劣化しない地球」を前提としていたが、これは大きな誤算であつた。

 ゴミ処理や産業廃棄物から発生するダイオキシンなどの有害物質への規制が急務であるが、同時に生産物に含有される有害物質の代替品の開発努力が図られねばならない。また、農業における化学肥料は、田畑山林の沃土を失はせしめ、生態系をも死枯させる元凶となつてゐる。長年にわたる化学肥料による多肥栽培は、「土が死ぬ」現象を発生させてきた。即ち、土壌中に有機物が少なくなり、生息する微生物の種類も単純化し、根の活性が低下する。農薬もまた農業生態系の単純化・貧困化を促進した。

 昨今の傾向として、有機肥料・自然農法・無農薬・減農薬などの試みが農民と消費者の共有意識の下になされてゐる。全農産物に占める比率は未だ微々たるものであるが、化学肥料多用、農薬多用の農業からの脱出の試みとしてきはめて貴重な経験が蓄積されてゐる。これらの経験を更に効果あらしめるためには、周辺科学が農学へ参加することが求められてゐる。有機農業は、環境学・生態学が獲得した成果を基盤とした先端科学であるとともに、環境政策・環境法の一環として位置づけられる必要がある。

四、地球温暖化対策の推進

  対処療法的な対策として注目されてゐるのが、排出された炭酸ガスを?@回収?A貯蔵?B再利用、する技術である。

 炭酸ガス貯蔵技術では、炭酸ガスを炭酸イオンにしてイオン交換体に吸着する方法がある。炭酸ガス再利用技術では、炭酸ガスを水素と反応させ、メタン・エタン・アルコール類を合成する「接触水素化技術」や人工「光合成」がある。また、炭酸ガス分解技術が研究されてをり、大気中の炭酸ガスを回収して炭素だけを取り除き酸素を再生する空気浄化法があり、開発が進められてゐる。

  しかしながら、主因となる炭酸ガスの排出については、化石燃料に依存したエネルギー体制を改めない限り、根本的な解決は期待できない。第一次石油ショックの際、或る政治評論家は「石油を捨てよ」と主張したが、今振り返ると正に至言であると言へよう。

五、地域開発計画と環境保全

 わが国の水田は芸術作品のやうに人間の手が隅々まで及んでゐる。農民の手に触れられてゐない土がないと思はれるほどである。東南アジアの水田地帯のやうに広大な氾濫原に作られた水田とは違つて、傾斜が急な土地さへも水が溜まり土が流亡しない水田に作り上げてきた。縄文・弥生時代からの人々の努力が長年にわたる稲作を可能にしたのである。近年、減反政策により水田を激減させ、農業を軽視する傾向が見られるが、それは自然と国土を荒廃させ、日本民族の稲作を通して形成されてきた伝統精神を破壊することにつながりかねない。

 環境保全の第一は、日本民族の根幹たる稲作を中心とした農業を復権させ、農業こそ新時代の開拓産業であることを世に示すべきである。そのためには、過疎問題に取り組み、中堅都市づくり、田園都市づくりを計画的に推し進め、県境にも新しい産業を興して人口を分散していく政策を実施しなければならない。

六、省エネルギー政策

 わが国が、省エネに真剣に取り組まなければならないのは、二つの理由による。第一は地球上の資源は有限であり、人類としてその限られた資源を有効に活用しなければならないこと。特に、わが国は経済大国ではあるが、少資源国である。第二は、今日人類がその多くを依存している化石燃料は、その消費が長い目で見ると地球環境の破壊に結びつくと言ふことである。

  わが国は、生産活動においても省エネ化が世界の中で最も進んでをり、エネルギー効率は優れてゐるが、一層の努力が必要である。

七、原発問題と新エネルギー開発

 原子力発電は、水力、火力に次ぐ第三の発電として今日使用されてゐるが、いくつもの不安の材料を抱へてゐる。別名「トイレなきマンション」と言はれるやうに、使用済み核燃料の後始末ができない欠点を持つてゐる。この原子力発電を超えた新エネルギー開発が効を奏すると、放射能の不安も化石燃料による環境汚染も解決されるのである。

〈燃料電池を活用せよ〉

 燃料電池は、水素と酸素を電気化学的に反応させることによつて、直接電気を取り出すことができる発電装置で、水力、火力、原子力に続く第四の発電システムとして評価されてゐる。

〈地熱発電〉

 わが国の地熱発電は、大正十三年(一九二四年)に当時の東京電灯の太刀川博士が、温泉地帯である大分県別府で○・七五KWの発電に成功したのに始まる。実用化は昭和四十一年(一九六六年)日本重化学工業が岩手県の松川発電所を稼働させたのが第一号である。以後、全国各地で地熱発電所が建設され、少しずつ拡大してゐる。

〈太陽光発電〉

 最近の太陽光発電の普及は凄まじい。この発電は太陽電池による発電方式である。阪神大震災を契機に、太陽光発電は災害時にも強みを発揮する分散型発電としての意義がクローズアップされた。公共施設等の空調用、照明用に補助電源としてフィールドテストが実施されてをり、この方面での普及が考へられる。現在、民間レベルでは太陽光発電住宅が完成し広報普及の段階に来てゐる。

  また、アジア諸国に対する国際協力として、例へばモンゴルにおける移動テントへの携帯用太陽光システムの設置や、ネパールでの太陽光発電を用いたシステムなど、分散型電源のメリットを活かすことができる。

〈風力発電〉

  発電構造が単純なため、コスト的にも十分実用化される段階に来てゐる。米民間調査機関のワールドウォッチ研究所は風力発電によつて世界の全電力の二○%を賄ふことができるといふ報告書を発表してゐる。

  山形県立川町の「風車村構想」は風力発電を実用化し、二○○○年には町全体の消費電力量を全て賄ふことを目指してゐる。

〈波力発電、海水温度差発電〉

  わが国は周囲を海に囲まれた海洋国であり、波力発電に最も恵まれた国である。平成十一年初め、産経新聞に米国の某研究所が日本が波力発電を採用すると原子力発電よりも経済性の面でコストが安くなるといふ研究成果を発表した。

 わが国も本腰で以上の様な研究開発に真剣な取り組みを行ふべきである。