『憲法』政策方針

維新政党・新風本部政策委員会
平成十五年十一月改訂


【現行憲法の性格】

 現行憲法は、大東亜戦争敗戦による連合軍の占領期間中、占領軍の威圧の下で明らかに押しつけられた米国製憲法である。改正手続は、国会に上程して天皇の裁可を戴いた上での発布といふことにはなつてゐるが、国民の目を欺く言論統制によつて全く選択肢のない状況の中に止むなく成立せしめられた憲法であるといふ事実は、既に内外の研究調査によつて確定されてゐる。

  占領期間中に被占領国の憲法を改正することは、ハーグ陸戦条現四三条や大西洋憲章三条によつて禁じられてをり、ポツダム宣言十二項においても「国民の自由に表明せる意思」によつて最終政治形態が決定されるとあり、その定めにも違反してゐる。

  独立国の憲法制定における第一義は、国家・国民の主体的意志によつて制定されなければならない、といふ成立経過にある。この点において現行憲法はわが国の主体的国家意志が蹂躙された、まさに占領憲法と称せざるを得ないものである。

 次に、現行憲法の内容であるが、前文に始まる条項の特長として 一、平和主義 二、人権主義 三、民主主義の三点が一般的に上げられてゐる。しかしそれらは、それぞれに 一、国家としての属性たる国防軍事力を否定してゐる二、国民の義務を軽視して過度な権利主張(利己主義)を是認する傾向 三、わが国の国体と立憲君主制政体を明らかにしてゐない、といふ悪しき特質に彩られてをり、わが国家にとつての基本的矛盾を孕んでゐる。それは、占領軍の占領政策目的がわが国の精神的弱体化を意図して様々に施行され(神道指令・国語改悪・教育改悪・言論統制・共産主義勢力助長など)、その集約として憲法改正が一方的に押しつけられたことに由来する(経済改革の中には評価すべきものがある)。

 現在のわが国の内外の状況は、外国からは“金の成る木”と見下され、国家としての矜持もなく国益を逸する外交姿勢と、利権保持のための政権・議席維持にしか思考が及ばない内政施策、そしてそれらの結果として教育社会状況における反日・無規範・無秩序傾向が顕著となつてをり、心ある国民の憂慮するところが大である。而して、それらの依つて来たる源に、現行占領憲法の悪弊(国民精神の植民地化)があることをしつかりと見据ゑなければならない。

【改正の指針】

 現在の日本国憲法なる成文法が、米国の初期対日方針に基づく、占領基本法乃至占領管理法たる性格であることは言ふを俟たない。此の占領基本法を銃剣の下にわが国に強制した事実は、国際法違反であるのは改めて喋々するまでもないが、これを今日まで継続してきたのは正に政治の怠慢であると難じられる。

 昨今、米ソ冷戦構造崩壊後の新しい秩序にむけての模索の中で、漸く憲法改正の議題が上がってきたのは必然的な過程と見られるが、かうした動きは所詮占領基本法の枠内で論じられてゐるに過ぎないことを指摘すべきであらう。更に今日における政治・経済・教育等々の諸問題は、この占領基本法がもたらした制度としての戦後体制の弊害であるのを深く認識しなければならず、そのためにもわが国としての正常なる国憲を速やかに回復することが何よりも急務とされる訳である。

 わが党は、先づ帝国憲法の復権を為すことが正当と考へるが、ただ戦前に対する反省及び現今における情勢の変化の中で、これをより良く改正して、わが国の最高法規とすることを妥当としてゐる。そこで帝国憲法を鑑みるに、当時の状況からして国体法と政体法とが渾然としてをり、法理上の論争をもたらした経緯が存した事実を理解する必要がある。

 この度わが党が呈示する改正案は、あくまでも悠久なる国史の道統に則り、その中でわが国が如何にあるべきかを思考した結果としてである。而して改正案の要諦は、国体と政体とを明確に峻別したところにある。前記した如く、帝国憲法においては国体と政体との規定が不明瞭であつたことにより、法理上の混乱を招かざるを得なかつたが、わが党はこの点を充分に留意した上で改正案を作成した次第である。

 改めて断るまでもなく、国体は決して明治以降の法体系の中で成立したものではなく、近代以前においては侵すことのできない不文律の慣習法として、厳然と自覚せられてゐたのである。而して国体の意義は、わが国の悠久なる理念として存してゐた事実を知らねばならない。かうした理念の尊厳性且つ不可侵性を保持するために、ここに不磨の大典としての「国体憲章」を明文化したことを特記しておく。

 国体に対する政体は、例へば律令政体、幕府政体とある様に、時勢の状況に応じての政治としての制度を意味する。それは正しく伊藤博文が『帝国憲法義解』において、「法ハ社会ノ必要ニ調熟シテ、其ノ効用ヲ為ス者ナリ、故ニ国体ノ大綱ハ万世ニ亘リ永遠恒久ニシテ、移動スヘカラスト雖、政制ノ節目ハ世運ト倶ニ事宜ヲ酌量シテ、之ヲ変通スルハ亦已ムヘカラサルノ必要タラスムハアラス」と説くところである。

 そこで現在の状況を勘案して、政体としての最高法規である「日本国憲法」を定め、これを明示した訳である。而してわが国近代における政体としての性格は、「五箇条の御誓文」に依つて公布され給ふ、公議輿論に基づく公議政体であり、新しい「日本国憲法」案はこの事実を再確認すると共に、内容を一層充実せしめることを目途としてゐる。

  ここに「国体憲章」と「日本国憲法」とが相俟つて、わが国伝統の君民共治の具現化としての法体系が完備されるのである。即ち不易なる理念としての「国体憲章」に基づいて、可変的な制度である「日本国憲法」の運用が潤滑に行はれ、国の秩序が整ふことになる訳である。

 わが党は、占領体制の延長戦としての戦後体制を速やかに克服し、以て本然のわが国を回復するために、帝国憲法の復元改正を基調とした「国体憲章」及び「日本国憲法」を制定することを強く提唱するものである。而してこれによつて主権国家日本の国益が恢弘され得ると考へてゐる。

【改正の方法】

 わが党が主張する国憲復権に関して、現憲法の改正条項に拘束される謂は全くない。繰り返すことになるが、現行の憲法と称される成文法は、あくまでも占領基本法乃至占領管理法としての性格であるのは明確なる事実である。本来ならば、昭和二十七年四月二十八日の平和条約発効に依つて、わが国が主権を完全に回復した時点において、斯かる占領基本法は当然失効したはずであるのにさうした手続きを怠つたがために、占領体制がそのまま戦後体制へと継続してしまつたところに、今日の諸問題が惹起されてゐる訳である。

 わが党は、戦後の歪んだ状況を打開するためには、主権国家としての正常なる国憲の回復を必須と考へるが、その方策は悠久の国史の道統に則つて為されなければならない。而して国憲回復に際して、最も緊要となるのが、先帝陛下の終戦の詔である。即ちこの詔で一番大事なのは、「国体ヲ護持シ得テ」と宣はれた畏き大御心である。私たちはかうした非常に有難い大御心を拝し奉りて、今日の政体を考へることが肝要となる。

 そこで先づわが国の政体が改変するに際しては、全て詔に依つてゐるといふ歴史事実を認識する必要がある。例へば、大化改新の詔は周知のことであるが、これに依つて政体が定まり、後の律令制度への道が開かれた大きな意義が存してゐる。更に明治維新に際しての王政復古の大号令は余りにも有名であるが、同時に王政復古の詔を宣り給ふてゐる事実を理解しなければならない。

 かうした歴史認識に基づいて、現在における国憲の回復を考へた場合、終戦の詔に示し給はれた「堪ヘ難キヲ堪ヘ忍ヒ難キヲ忍ヒ」との思し召しを、私たちは第一に念頭に置くべきである。即ち占領軍が、軍隊の無条件降伏を政府の無条件降伏と擬装し、国際法違反の占領基本法を憲法と称して強制したやうな異常事態を予測され給ふての、斯くの如き深い思し召しであらせられたと拝察し奉る訳である。

 現今の状況は、このやうな先帝陛下の辱い思し召しを全く考慮せずに、ただ情勢論としての私擬憲法を論つてゐるに過ぎないと見られよう。わが国の国憲は欽定であることが何よりも大前提となるのは言ふまでもない。かうした国史の道統から考へて行けば、国憲回復の方途は自ら導かれるはずである。

 前述した如く、平和条約発効に依つて、已に占領基本法としての性格は失効してゐるのは明かであり、その確認をせずに年月を経過したのが今日までの問題となつてゐるのであるから、改めて国会において手続きとしての失効決議を為し、過半数以上を得たならば、これを国民の総意と看做した上で、内閣総理大臣はこの由を直ちに上奏申し上げ、陛下の詔を拝戴して、国憲の復元改正を実現するのが、わが国における正当な法理である。

 国憲回復に伴つて、占領政策に依つて作成された諸法規も必然的に正常化されなければならないが、その際の混乱を避けるために、公布と実施との間に暫定期間を設けることは当然の措置であらう。斯くして国体と政体との整合性が保たれ、わが国は主権国家としての正当性を国際的に復興することができる訳である。

 わが党は、結党以来祖国再建を最大の目途として掲げて来たが、祖国とは文字通り悠かなる代々の父祖たちから伝へられて来た、この日本国のことである。昭和二十年八月十五日、先帝陛下の終戦の詔を拝し奉り、「堪ヘ難キヲ堪ヘ忍ヒ難キヲ忍」んで来たが、この詔の畏き御精神を時の当路者たちは蔑ろにして、国憲の回復を怠つてゐたのが実情である。今こそ私たちは国史の道統に則つて、法理に従ひ、国憲正常化にむけて邁進すべき秋であるのを強く自覚せざるを得ない。

 改めて略述すれば、わが党は帝国憲法復元改正論を基本的主張とする。帝国憲法復元改正の論拠は、先に述べた様に現行憲法制定過程における問題点から現行憲法の失効論に立つことにある。しかし、現行憲法が五十余年も実態として機能して来てゐることも事実であり、現実の国民生活に大きな断絶を生じせしめないことが大切である。従つて、わが党の復元改正論は、わが国憲法の正統性を回復するための手続論の側面が強い。即ち、その手続とは、予め政府において帝国憲法改正案を作成しておき、国会において憲法改正のための議案上程を行ひ、現行憲法の失効と帝国憲法の復元を宣し、直ちに陛下への上奏によつて詔を拝戴し、その後、作成しておいた帝国憲法改正案を議決するものである。この手続を経ることによつて、憲法改正による時間的空白を無くし、現行憲法制定過程の不正義をも正すと同時に、欽定憲法としての性格も充足することができる。

  そして、過去における現行憲法下での法判断は特定の期間は有効とされるが、その後は徐々に新しい法判断に変更される。

 これらの改正の方法は、我々が多数を占める政権党の立場にあつて初めて可能な方策である。しかし、現行憲法は改正が極めて困難な規定を有する憲法であり、その困難を打開する策として失効論の主張が改めて注目される可能性は大きく、そのための世論の喚起や改憲勢力の創出が必要であり、我々の政治勢力の増大が根本的な前提となる。

【改正の内容】

 わが党が制定を目指す憲法は、建国の理想に発する精神的・道徳的伝統をわが国の国体として成文化した国体法と、その国体に基づいて統治権力の組織や権限を定める政体法とによつて構成される。その意図するところは、革命でも起きない限り国体法は不磨の大典とし、政体法は時代の変遷の中で改正を容易なものとするところにある。

 政体法については、わが国の政体は元々立憲君主制であり、ここに君民共治としての議会制民主主義であることを前提とし、国会・内閣や国軍のあり方及び国民の権利・義務、財政制度や地方制度など、国家運営の基本を定める内容とする。昨今の各種憲法試案は、政策レベルの考へを憲法条項として入れる傾向が強いのが特徴であるが、わが党の試案はそれを排してゐる。憲法試案は別紙の如くとする。



国体憲章案

維新政党・新風本部政策委員会
平成十五年十一月第一次案

第一条 日本国は、万世一系の天皇之を統治す。
第二条 天皇は、神聖にして侵すべからず。
第三条 皇位は、皇室典範の定むる所に依り、皇男子孫之を継承す。
第四条 天皇は、祭祀並びに儀礼を司る。
第五条 天皇は、国政又は国益上必要ある時、政府其の他公の機関並びに国民に対し親諭を発す。
第六条 天皇は、法律上並びに政治上の責に任ぜず。
第七条 摂政は、天皇の名に於て国権を総攬す。摂政を置くは皇室典範の定むる所に依る。
第八条 天皇崩ずる時は、皇嗣即ち踐祚し、祖宗の神器を承く。
第九条 即位の礼及び大嘗祭は、京都に於て之を行ふ。
第十条 踐祚の後、元号を建て、一世の間に再び改めざること。



日本国憲法案

維新政党・新風本部政策委員会
平成十五年十一月第一次案

【上諭】

【第一章】 天皇


第一条 天皇は、国の元首にして国権を総攬し、此の憲法の条規に依り之を行ふ。
第二条 天皇は、国会の協賛を以て立法権を行ふ。
第三条 天皇は、法律を裁可し其の公布を命す。凡て法律勅令其の他国務に関る詔勅は国務大臣の副署を要す。
第四条 天皇は、国会を召集し其の開会閉会停会及衆議院の解散を命ず。
第五条 天皇は国会の召集在らざる場合に於て、公共の安全を保持し、又は其の災厄を避くる為、緊急の必要に由り、枢密院の助言を得て法律に代るべき勅令を発す。
此の勅令は次の会期の初に国会に提出し国会に於て承認を得。
第六条 天皇は、法律を執行する為に、公共の安寧秩序を保持する為に、又は国民の幸福を増進する為に、必要なる命令を発し、又は発せしむ。但し命令を以て法律を変更することを得ず。
第七条 天皇は、内閣総理大臣・衆参両院議長・最高裁判所長官の三権の長を親任し、外国大使の信任を行ふ。
第八条 天皇は、国軍を統帥し、指揮権は内閣総理大臣が有す。軍の編制及常備兵額は法律を以て之を定む。
第九条 天皇は、戦を宣し和を講し、及諸般の条約を締結す。
第十条 天皇は、戒厳を宣告す。
第十一条 天皇は、栄典を授与す。
第十二条 天皇は、大赦特赦減刑及復権を命ず。

【第二章】 国民

第十三条 日本国民たるの要件は、法律の定むる所に依る。
第十四条 日本国民は、其の能力に応し公益の為必要なる勤務を為すの義務を有す。
第十五条 日本国民は、公共の秩序に反せざる限り人間必需の生活を享受するの権利を有す。
第十六条 日本国民は、法律命令の定むる所の資格に応し均く官吏に任せられ、及其の他の公務に就くの権利を有す。
第十七条 日本国民は、法律の定むる所に従ひ国防の義務を有す。
第十八条 日本国民は、法律の定むる所に従ひ租税其の他の公課を納むるの義務を有す。
第十九条 日本国民は、居住移転及職業の自由を有す。
第二十条 日本国民は、故なく逮捕監禁審問処罰を受くることなし。
第二十一条 日本国民は、教育を受ける権利及義務を有す。
第二十二条 日本国民は、裁判を受くるの権利を有す。
第二十三条 日本国民は、其の法律に定むる以外は、許諾なくして住居に侵入せられ、及捜索せらるることなし。
第二十四条 日本国民は信書及之に準すへきものの秘密を侵さるることなし。
第二十五条 日本国民は其の財産権を侵さるることなし。
公益の為必要なる制限は法律の定むる所に依り且特別の事由なき限相当の補償を以てす。
第二十六条 日本国民は、信教の自由を有す。
安寧秩序を妨くる者、国民たるの義務に背く者、及保護奨励を望む者に対し加ふる制限は法律の定むる所に依る。
第二十七条 日本国民は、公共の秩序に反せざる限り、思想学問芸術及言論著作印行集会結社の自由を有す。
第二十八条 日本国民は、別に定むる所の規程に従ひ請願を為すの権利を有す。
第二十九条 本章に示したるものの外、日本国民の自由を制限するは、法律又は命令に依る。
第三十条 第二十八条乃至第二十九条は、法律に別段の定なき限、日本国民に非さる者に付、之を準用す。

【第三章】 内閣及枢密院

第三十一条 行政の執行権は内閣に属す。
第三十二条 内閣総理大臣は、天皇を輔弼し其の責に任す。
第三十三条 内閣総理大臣の選任は、国会の過半数による別に定むる所の規程に依り、一定の手続を経て之を行ふ。
第三十四条 内閣総理大臣は、官制の定むる所に依り国務大臣を選任し内閣を組織す。但し其の過半数は国会議員の中から選任す。
第三十五条 枢密院は、官制の定むる所に依り天皇の諮詢に応へ其の意見を上奏す。
天皇は重要の国務に付、枢密院に諮詢することあるへし。

【第四章】 国会

第三十六条 国会は、衆議院参議院の両院を以て成立す。
第三十七条 衆議院は、衆議院法の定むる所に依り、公選せられたる議員を以て組織す。
第三十八条 参議院は、参議院法の定むる所に依り、選任せられたる議員を以て組織す。
第三十九条 何人も同時に両議院の議員たることを得ず。
第四十条 凡て法律は国会の協賛を経るを要す。
第四十一条 両議院は、政府の提出する法律案を議決し、及各々法律案を提出することを得。
第四十二条 両議院の役割は、議院法の定めるところにより衆議院の議決を優位とする。
第四十三条 両議院は、法律又は其の他の事件に付、各々其の意見を政府に建議することを得。但し其の採納を得さるものは、同会期中に於て再ひ建議することを得す。
第四十四条 国会は、毎年之を召集す。
第四十五条 衆議院解散を命せられたるときは、勅命を以て新に議員を選挙せしめ、法律の定むる処により之を召集すへし。
第四十六条 両議院は、各々其の総議員三分の一以上出席するに非されは、議事を開き議決を為すことを得す。
第四十七条 両議院の議事は、過半数を以て決す。可否同数なるときは議長の決する所に依る。
第四十八条 両議院の会議は公開す。
第四十九条 両議院は、各々天皇に上奏することを得。
第五十条 両議院は、国民より呈出する請願書を受くることを得。
第五十一条 両議院は、此の憲法及議院法に掲くるものの外、内部の規律維持等に必要なる諸規則を定むることを得。
第五十二条 両議院の議員は、議院に於て発言したる意見及表決に付、院外に於て責を負ふことなし。但し議員自ら其の言論を演説刊行筆記又は其の他の方法を以て公布したるときは一般の法律に依り処分せらるへし。
第五十三条 両議院の議員は、現行犯罪又は内乱外患に関る罪を除く外、会期中其の院の許諾なくして引続き逮捕せられ、及新に逮捕せらるることなし。
第五十四条 国務大臣及政府委員は、何時たりとも各議院に出席し及発言することを得。
第五十五条 両議院は、各々総議員十分の一以上の賛成を以てする動議に基く決議あるときは、特定の国務大臣及其の院の議員の職務に付、不当の事項存するや否やを審査する為査問委員会を設く。

【第五章】 司法

第五十六条 司法権は天皇の名に於て法律により裁判所之を行ふ。裁判所の構成は法律を以て之を定む。
第五十七条 裁判官は、刑法の宣告又は懲戒の処分に由るの外其の官を免せらるることなし。
懲戒の条規は法律を以て之を定む。
第五十八条 裁判の対審判決は之を公開す。但し安寧秩序又は人権を害するの虞あるときは法律に依り又は裁判所の決議を以て対審の公開を停むることを得。
前項裁判所の決議に対し法律の定むる所に依り当事者弁護人及傍聴人異議を申立てたるときは、裁判所は再議することあるへし。
第五十九条 違憲審査は、別に法律を以て定むる憲法裁判所にて之を行ふ。
第六十条 軍法の管轄に属すへきものは別に法律を以て之を定む。
第六十一条 犯罪の検察は、法律に依り検事之を行ふ。
第六十二条 裁判官及検事は、公正の態度に付社会の信頼を保持すへし。
裁判官及検事は、相互独立して共に司法権の適正なる運営を期し両名職域の混淆なきことを要す。

【第六章】 財政

第六十三条 新に租税其の他の公課を課し及課率を変更するは、法律を以て之を定むへし。但し報償に属する行政上の手数料及其の他の収納金は此の限に在らす。
国債を起し及予算に定めたるものを除く外、国庫の負担となるへき契約を為すは、国会の協賛を経へし。
第六十四条 国会の歳出歳入は、毎年予算を以て国会の協賛を経へし。
予算の款項に超過し又は予算の外に生したる支出あるときは、後日国会の承諾を求むるを要す。
第六十五条 予算案は、前に衆議院に提出すへし。
予算案に付、参議院に於て衆議院と異なる議決を為したる場合には、政府は衆議院の請求に依り参議院の再議を求むることを要す。
第六十六条 皇室経費は、現在の定額に依り毎年国庫より之を支出す。
国会は皇室経費に付、新に考慮を為すことを政府に求むることを得。
前項の場合に於て政府同意するときは定額の増減を計上し国会の協賛を要せす。
第六十七条 憲法上の大権に基つける既定の歳出、法律の結果に由る歳出、及法律上政府の義務に属する歳出は、政府の同意なくして国会を廃除し又は削減することを得す。
第六十八条 特別の須要により政府は予め年限を定め継続費として国会の協賛を求むることを得。
第六十九条 公共の安全を保持する為緊急の需用ある場合に於て内外の情形により国会を召集すること能はさるときは、政府は勅令に依り財政上必要の処分を為すことを得。
前項の場合に於ては次の会期の初に国会に提出し其の承諾を求むるを要す。
第七十条 国会に於て予算を議定せす、又は予算成立に至らさるときは、政府は前年度の予算を施行すへし。
第七十一条 国家の歳出歳入の決算は会計検査院之を検査確定し、政府は其の検査報告と倶に之を国会に提出すへし。
会計検査院は、天皇に直隷し国務大臣に対し独立して其の職務を行ひ其の意見を上奏するものとす。
会計検査院の組織及職権は、法律を以て之を定む。
会計検査官の資格其の身分の保障に付ては第五十七条を準用す。

【第七章】 地方自治

第七十二条 地方公共団体の組織及運営に関する事項は地方自治の本旨に基いて法律で是を定む。
第七十三条 地方公共団体には法律の定むる所に依り其の議事機関として議会を設置す。
地方公共団体の長其の議会の議員及法律の定むる其の他の吏員は其の地方公共団体の住民が直接此を選挙す。
第七十四条 地方公共団体は其の財産を管理し事務を処理し及行政を執行する権能を有し法律の範囲内で条例を制定することを得。
第七十五条 地方公共団体は、国と共同して国民の福祉の増進に務めるものとする。

【第八章】 補則

第七十六条 将釆此の憲法を改正するの必要あるときは、勅命を以て議案を国会の議に付すへし。
此の場合に於て両議院は各々其の総員三分の二以上出席するに非されは議事を開くことを得す。出席議員三分の二以上の多数を得るに非されは改正の議決を為すことを得す。
第七十七条 国会は憲法全体の改正の必要を議決したる場合に於ては勅旨に依り国民投票を行ひ国民投票の結果過半数を得たる場合は改正の必要を認む。
国民投票を行ふの方法は法律を以て之を定む。
第七十八条 国会は、憲法の一定の条項の改正の必要を議決したる場合に於ては政府は勅旨に依り、第七十七条の特別審議機関の審議を経て改正の議案を作り第七十六条の手続を奏請す。